児玉研究所

線維筋痛症②

 線維筋痛症(FMS)は全身の耐え難い恒常的な疼痛を訴える病気です。厚労省研究班によると、全国の患者は推計200万人とされますが、実際には3~4000人の患者しか特定されていません。激痛があるのに血液検査、レントゲン検査、CTスキャンやMRIなどの検査でも病気特有の異常所見がないため、日本の医療機関では、正しく評価されることが少なく、医師から「病気ではない」とか「精神的なもの」だと言われて傷つき、見放されたと感じるケースも数多いとされています。診断は臨床症状と18ある圧痛点を確認して行いますが、2007年2月の日本テレビの元女性アナウンサーが、この線維筋痛症を苦にして43歳の若さで自殺したという衝撃的な報道があり、一気に注目を集めました。症状は季節的、あるいは日内変動があり、症状は全身に及びます。
 爪や髪への接触、服のこすれ、音や光、温度・湿度の変化など、ささいな刺激でも激痛が走ることが特徴です。多くの患者が不眠を自覚し、頭痛、めまい、疲労感、倦怠感、四肢の脱力や筋肉痛、関節痛、不安感、うつ症状などを訴え、関節リウマチやシェーグレン症候群など膠原病の症状を認めることもあります。災害、外傷、手術、出産、その他の心理的ストレスをきっかけに発症することが知られています。まだ詳しい原因の解明はなされておりませんが、痛みの原因となる原発病巣(痛みの生じる場所)があり、わずかな痛みであってもそれが脳で何倍にも増殖され、強い痛みとなって全身に送られる「中枢感作」という機序が考えられています。残念ながら本症は歯科ではほとんど認知されておりませんが、90%に顎関節症があることが周知の事実として報道されています。私は顎関節に関する外側翼突筋が原因病巣で、その部分から脳の痛みの中枢への慢性刺激が何らかの心理的ストレスをきっかけに増幅され、全身の痛みとして発症するという仮説をたて、治療に取り組んでいます。まだ症例数は少ないのですが一様に効果をあげており、治療法のひとつとして確立したいと思っています。

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