線維筋痛症①
顎関節症の原因はさまざまですが、異常な口の開閉運動、歯ぎしりや歯の噛みしめなど顎に加わる異常な力、詰め物など歯の修復物による異常、歯並びが乱れている歯列不正、片側の歯だけで噛む癖など、噛み合わせがずれてしまった場合、外傷などで顎を骨折した場合などが知られています。最近では精神的なストレスが引き金になっている症例も増えておりますが、これはどんな人でも顎関節症になる可能性があることを示していることに他なりません。今まで症状がなくても、ストレスフルな生活に陥ると交感神経の緊張が高まり、口腔周囲筋の緊張は全身の筋の緊張へと波及し、さまざまな症状が現れます。顎関節症の原則は「むやみに歯を削らないこと」です。これは歯を削ることで新たな身体の歪みを生じた場合、もはや修復させることができないからです。そのため、まずはスプリントという器具を使用して症状の軽減を図り、徐々に症状を改善していきます。近年、顎関節症との関連で、「線維筋痛症」があります。この病気は全身の筋肉や関節の激しい痛みが持続する病気で、中年女性に多く、全国には200万人以上の患者がいると推定されています。臨床検査で有意な所見に乏しく、また医師もこの病気を良く認知していないため、強い痛みや疲労感、うつ状態などに苦しんで、整形外科、リウマチ科、ペインクリニック、皮膚科、神経科、精神科などを転々とするケースが多く見られます。厚生省の研究班の診断基準では、全身に18ヶ所ある圧痛点(指などで押した際に痛みが強く出る場所)のうち10ヶ所以上で痛みがあり、その痛みが3カ月以上持続すれば本症が疑われます。線維筋痛症では舌痛症や口腔内乾燥症など口腔に関連した症状が多く見られますが、ワシントン大学のローダスらは調査した線維筋痛症の患者の67.6%に顎関節症の症状が認められたと報告しています。全例ではありませんが、顎関節症の治療で痛みが軽減する例もあり、レグナイトなどの神経障害性疼痛治療薬やノイロトロピン(鎮痛剤)などに加えて、私は歯科的治療も選択のひとつと考えています。
>> ②へ進む