児玉研究所

めまい

 めまいは、わたしたちが日頃経験するありふれた身体症状のひとつでもあります。周囲がぐるぐると回る「回転感」を訴えるもの、体が宙に浮いたり、谷底に落ちたりするような「昇降感」、ふらつきや運動感覚の異常を訴えるもの、目の前が真っ暗になる「暗黒感」、あるいは頭痛、吐き気、失神などの自律神経症状をともなうものなど、その内容はさまざまで、原因も多岐にわたります。

 人間は非常に発達した感覚器―神経系―運動系のメカニズムを持っており、目(視器)や耳(前庭器)、足裏・関節(体性感覚受容器)などの、末梢の感覚器から得た情報を、小脳や大脳皮質などの中枢神経系が、統合・調節して身体の平衡(バランス)を維持しています。この経路のどこかに異常が生じると、「めまい」が出現するわけです。とくに耳の奥にある鼓膜(音をとらえて振動する)や三半規管(体のバランスを取る器官)・蝸牛(かぎゅう)(音の高低を聞き分ける器官)などの平衡感覚器から脳にいたる部分が重要です。

 めまいが起こるメカニズムについては、不安にともなう生理的変化としての交感神経緊張症状と過換気(過呼吸)による症状のふたつが想定されています。不安が意識されずに、めまいだけが生じるのは、より不快な経験である不安に対する防衛規制がはたらいて、不安の等価症状としてめまいが起こると考えられています。うつ病の症状としてのめまいは、不安によるめまいの場合もありますが、全身倦怠や易疲労性、集中困難などの表現と考えられる場合が多くみられます。

 もっとも顕著なのが、耳閉感(じへいかん)(耳が詰まっている感じ)や難聴、回転性のめまいを訴えるメニエール病およびその周辺疾患です。メニエール病では、内耳にあるリンパ液が過剰に増えてしまうために起こります。めまい発作中の平衡機能の障害は日常の動作すらできない場合もまれではなく、耳閉感や難聴は聴力を失うのではないかとの不安をかき立てます。運転や危険な作業に従事する患者では、仕事中の発