児玉研究所

咬耗症と摩耗症

 咬耗症(こうもうしょう)とは、咀嚼(そしゃく)(噛み砕く)することによって歯質が消耗することをいいます。生えてきたばかりの歯は、噛む面に深い溝がありますが、物を食べているうちにだんだんとすり減っていきます。咬耗は、歯と歯とが噛み合う部分から始まりますが、条件によっては病的なほど強くあらわれることもあります。

 咬耗の程度は、食べる物の固さ、咀嚼の回数、歯の性状や咬合力(噛む力)など個人差が大きいものですが、噛み合わせている歯が上下同じようにすり減る場合は、固い食物の習慣的な摂取、たとえば玄米食やタバコの常用、夜間の歯ぎしりなどがあげられます。

 噛み合わさる面(咬合面)や歯のふち(切(せつ)縁(えん))のエナメル質がなくなると象牙質が露出してきます。咬耗は一般に平滑で表面は磨いたようになりますが、露出した象牙質の部分が凹んで、皿状のくぼみができますと、水がしみたりもします。

 すり減った歯が特定している場合は、その歯にばかり強い力をかける噛み癖があったり、向かい合う歯の噛み合う部位に金属などの異なる材質が用いられていることが多いのですが、抜けた歯や未処置のムシ歯のため、噛める歯に力が集中してしまって生ずることもあります。

 咬耗が起きても歯の神経(歯(し)髄(ずい))が充分に機能しているときは、温熱などの外部刺激が伝わりにくいので、多くの場合、歯科的処置は必要としません。

 摩耗は、咀嚼以外の機械的摩擦によって、歯の一部がすり減ることをいいます。歯ブラシを誤用したり、部分入れ歯の保持のためにかけている金属と歯とに摩擦があると、歯と歯肉との境の部分(歯頸(しけい)部)にくさび状の欠損が生じたりします。

 また、大工(釘をくわえる)、裁縫師(針をくわえる)、吹奏楽器の演奏者、パイプの愛好家なども、それぞれをくわえる部位が摩耗して知覚過敏症をきたすことがあります。

 知覚過敏を自覚するときは、咬耗の場合と同様、原因の除去に努める必要があります。咬耗・摩耗が著しくて歯の機能を損なう場合は、きちんと治療を受けねばなりません。