児玉研究所

肩こり

 先年行われた有訴率の調査でもっとも高い症状は、男性では腰痛、女性では肩こりでした。この肩こりは頚椎(けいつい)(首の骨)を両側から支えている僧帽筋(そうぼうきん)や肩甲挙(けんこうきょ)筋(きん)、菱形筋(りょうけいきん)などの筋肉が緊張してこわばった不快感で、進化の過程で二足歩行をするようになった人類が背負った、いわば宿命的な悩みです。

 この筋緊張性の肩こりには、歯の噛みしめや咬合(こうごう)(歯の噛み合わせ)の異状が深くかかわっています。とくにパソコン、書き物、読書など長時間にわたる動きの少ない静的な筋肉作業や前かがみで指先を使う細かい作業は歯の噛みしめを起こしやすく、長期に反復する噛みしめは頸部から背部筋の緊張をきたして、周囲の血行不良から疲労物質の蓄積を招きます。

 咬合不全も同様に筋肉を緊張させ、周囲の神経・血管を圧迫します。これは局所の刺激として自律神経の起始部である視床下部に達し、疲労物質は発痛性物質として再び局所の筋肉を緊張させて血管を収縮させるため、血行はさらに不良となって肩こりを助長するという悪循環に陥ります。