診療内容

歯の着色(治療法)

 今日、「白い歯」は美と健康の象徴として確固たる地位を築いており、白い歯への憧れは世代を超えた社会的現象となった感さえあります。

 歯の色に対する価値観は分化によっても異なり、かつては我が国の女性も歯を黒く染めた時期がありました。
 歯の着色や変色は上顎前歯の外側や下顎前歯の内側などに良く認められますが、その原因は外因性と内因性に大別されます。

 臨床的には外因性の頻度が高いのですが、外因性は食用色素やタバコのヤニ(タール成分)、虫歯による歯髄壊死(歯の神経が死ぬ)、歯の修復物(詰め物)、薬剤(フッ化ジアミン銀)などによる色素沈着で、緑色、橙色、褐色、黒色・・・と色さまざまです。

 お茶や紅茶に含まれるタンニン酸による黒色の歯は、日常の診察でも良く眼にします。これは鉄分の還元により生じる物ですが、沈着量は必ずしもお茶の摂取量と比例しません。

 歯垢(プラーク)の存在は色素沈着を促進しますので、日頃の手入れや歯並びが悪い人は変色しやすく、変色がなくても引っ込んだ歯などは陰になって黒ずんで見えることがあります。

 軽い色素沈着なら日頃のブラッシングでも軽減できますが、頑固な着色を除去するには、機械的清掃(スケーリング)が必要となります。

 内因性のものは歯質自体が変色するもので、ミノマイシンなどテトラサイクリン系の抗生物質による着色歯が有名です。

 これは妊娠中に服用した場合はその子供に、あるいは永久歯の形成期にテトラサイクリングを投与された小児に現れます。歯冠全体に変色が認められ、黒色。暗紫色になります。

 6歳未満、特に乳幼児に本剤を用いるときは注意を要します。

 その他の原因としては、エナメル質形成不全、フッ素沈着症などがあります。また加齢にともなう生理的な変色もあります。

 これは病的な要因ではありませんが、象牙質の厚みが増して黄褐色が強くなり、徐々に歯の色調が濃くなるもので、誰もが避けて通れない老化現象です。

 このような時は抗生物質や抗炎症剤を用いて症状を抑えますが、これらはあくまでも対処療法であり、副作用や耐性菌の問題もあって長期の連用はできません。

 以上の処置で小康状態が得られたならば、その状態を維持して再発を防ぐような根幹的対応を心がけねばなりません。

 このためには正しい歯磨きの励行と、定期的な歯科検診が不可欠です。