診療内容

歯科治療と虫歯(齲蝕) ②

 以前は歯を失う原因のほとんどが歯槽膿漏(歯周病)であるとされ、多くの健康読本でも約8割の歯は歯槽膿漏のために抜かれると解説していました。しかし最近の調査では齲蝕(うしょく)によるものが55%と過半数を占め、歯槽膿漏によるものは38%にすぎませんでした。齲蝕、すなわち歯質が侵されて虫歯が進行・悪化することが、歯を失うことにつながることが判明したわけです。虫歯はその齲蝕の程度によりC0からC4に分けられますが、C1およびC2までの初期齲蝕はミュータンス菌やカンジタ菌により侵された歯質を取り除き、金属や歯科用レンジ(プラスチック樹脂)などで元通りに修復してやれば終了です。しかし歯髄(歯神経)にまで齲蝕が進行してしまったC3以上のものでは、まず歯髄を取り除き、抜いた後の歯髄腔を良く消毒してからゴム状の材料を充填し、隙間を埋めてやります。歯質の崩壊がひどい場合は金属で土台を作り、さらにその上から屋根のように冠(クラウン)をかぶせなければなりません。特に小児では齲蝕の進行が成人よりも早く、見ためよりもダメージが大きいことが多いので注意が必要です。また歯の痛みがなくなったからと放置したり、治療を中断することは厳禁です。何故なら痛みが消えたのは歯髄が死んで痛みを感じることができなくなった結果であり、齲蝕が治療したわけではないからです。口腔内の細菌や微生物が歯髄腔から奥へと侵入することにより、歯を支えている顎の骨が化膿して腐ったり、時には全身の余病を併発することもあります。
 齲蝕は口臭の原因となるだけでなく、歯を失うと咀嚼力が落ち、発音も不明瞭となり、顔つきも老々しくなり、精神活動まで低下してしまいます。また小児では後から萌えてくる永久歯にも悪影響(歯列の不正、歯の形成不全)を及ぼします。齲蝕の進行とともに治療は複雑になり、当然通院回数も増え、費用もかさみますので、齲蝕がエナメル質内にあるうちに発見して治療することが望まれます。
 やはり自分の歯を失わないためには、日々ブラッシングに努めるとともに定期的に歯科検診を受けることが第一です。