診療内容

歯の咬み合わせと手指のしびれ

 皆さんは長時間の正座の後に指先がじんじんしたり、感覚の鈍さを自覚した経験をお持ちのことと思います。

 これは末梢の神経の圧迫や循環不全によって引き起こされる物ですが、咬合(歯の噛み合わせ)の異常でおこる症状のひとつにこの手指のしびれがあります。

 しびれとは一過性の知覚神経の障害で、臨床的には首や肩のトラブルに由来する例が多いのですが、これは首が3~4kgもある重い頭を支えているからです。

 首は7個の骨(頸椎)からなりますが、特に一番目や二番目の頸椎は、単に頭部を支え、脊髄を守りだけではなく、曲げる、傾ける、そらす、まわすなど複雑な運動にも関与しています。

 歯科領域におけるしびれは咬合の異常に起因することが多く、不正咬合は頸部の自由な動きを抑制し、頸椎を支える口腔周囲筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋、肩甲拳筋の過度の緊張をまねき、肩から上肢にかけての「こり」や「しびれ」をきたします。

 正中神経の圧迫・絞扼「こうやく(しめつける)」でおこる「手根管症候群」は中年の女性に多く見られ、親指や人差し指のしびれを訴え、尺骨神経の圧迫・絞扼でおこる「肘部管症候群」は小指側のしびれを訴えます。

 このような症状が続く場合は、しびれの分布やその他の神経症状、疼痛の有無、筋肉の状態などを診察した上で、X線、MRI、筋電図などを必要に応じてチェックし、内科、脳外科、婦人科など関連領域を統合的に調べねばなりません。

 糖尿病、高血圧、関節リウマチ、更年期障害、外傷、腫瘍、人工透析など、しびれの原因が特定されることもありますが、実際は原因不明の場合も少なくありません。

 しびれが反復し、長引く場合は歯科医に相談し、是非、歯の噛み合わせのチェックをお勧めします。